【18.10.24】第32回経営者フォーラム
【基調報告】我が社の働き方(人づくり)改革30年
第32回経営者フォーラムは、10月24日(水)金沢東急ホテルで開催されました。
以下、基調報告および分科会記録。
報告者 藤河次宏 氏 拓新産業(株)会長 (福岡同友会)
拓新産業(株)は昭和51年福岡県で創業、建設資材の販売会社です。現在は多くの学生が企業説明会に訪れる会社ですが、ここに至るまでには、社内改革に挑んだ社長と社員の努力がありました。
藤河氏が同友会に入会したのは30年前、入会後すぐに経営指針を成文化し同友会の学びを実践していました。その折、同友会の共同求人で合同企業説明会に参加します。50社の企業が参加し学生も多く来場しましたが、同社には一人も学生が集まりませんでした。その苦い経験により、藤河会員は人材の確保・定着と育成は企業の最重要課題と気づき、働きやすい職場環境づくりを実践します。
どうすれば魅力ある会社になれるのだろうと、就業規則を見直しながら、特に力を入れたのが、完全週休二日制への移行、有給休暇の完全消化と残業ゼロ、休日出勤ゼロ、育児休業100%でした。工事の現場を抱えているため、有給休暇の完全消化は難しく、当初は社長自ら朝礼で消化率の悪い社員に呼びかけ、それを続けるうちに消化率が向上しました。残業についても、社員一人一人がお互いの業務を補佐し交代することで大幅な削減を実現しました。そのような企業努力により、毎年の新卒採用が可能となり30年経過した今では、売上は横ばいでも利益が11倍となりました。
藤河氏は「一流の中小企業を目指す社長の実践を社員が見て理解してくれている。30年前の共同求人で採用した5人の社員が、経営指針実践や社内研修で育ち、今では幹部となり生徒から先生へと成長を遂げている。それを見届けるのが楽しみだ」と語りました。
【第1分科会】経営指針
テーマ「持続可能な企業をめざして 未来を担う子どもたちのために私たちができること」
報告者 渡邊博子 氏 (株)スリーシー 代表取締役/京都同友会 理事・伏見支部長 経営労働副委員長
経営者の使命とは事業を通して地域の課題を解決していくこと。生活保護を受けていたシングルマザーたちと出逢い、彼女たちを雇用することで、本人とその子供たちを幸せにしたい。そんな想いとは裏腹に、現実にうまくいかない日々の中で、みんなを信じて任せることに。すると目先の損得でなく、真心や思いやりで動く社員へと輝きだす、その姿を見て「助けられていたのは自分」ということに気づきます。
同友会の学びを実践する為には、経営指針を成文化するだけでなく、企業変革支援プログラムSTEP1と2を社員と共に行い、互いのギャップに気づき、会社の事について全員で深く話し合うことが重要。そうすることにより全社一丸で働きやすい職場、外部環境の変化に負けない強い経営体質、魅力ある会社にしていくことができる。大事なことは経営者の“本気”を見せることです。
「人を生かす」とは受けた恩を感じ、感謝できること。違いを受け入れ、他人を尊重すること。そんな温かい関係性を気づき、地域を家族にすること。
渡邊さんの人づくり・地域づくりへのまっすぐな想いと実践されてきた事が心に響く、感動的な報告でした。
【第2分科会】社員共育
テーマ「理想の経営者と幹部社員の共育ちとは~社員共育に学ぶ人づくりの重要性~」
報告者 住本信一 氏 (株)エム・ソフト 取締役 営業本部長/東京同友会共育委員
「経営幹部は部下を成長させたければ、自身が成長しなければ部下の成長はありえない」と住本氏は言います。東京同友会の社員共育塾では経営幹部コース、管理職コース、リーダーコースがあり、経営幹部コースを受講する人にはこのように伝えているそうです。
住本氏は20歳のころ、ある武道団体の支部長を任されましたが、どんどん人が辞めていきました。現状に歯止めがかけられず、本部に相談したところ「今の現状がお前の実力なんだよ」と言われ一念発起。住本氏は共育について必死に勉強をしたことで、自身の考え方や行動が変わり、結果周りが明るくなり活気があふれるようになったという経験をしました。
東京同友会の共育委員会が目指すものは次の3つに定められています。「やり方ではなくあり方を」「経営理念に沿った研修」「会員企業の叡智を集結する」。委員長やメンバーが変わっても本質が変わらないように皆で共有しています。
住本氏は「原点にして頂点」という言葉を大切にしています。原点である、自身の原体験や理念を常に思い返し行動をしていくことが重要であると思いました。
【第3分科会】働き方改革
テーマ「働き方改革で会社が変わる理由(わけ)」~働きやすい職場で社員の幸せを追求~
報告者 岡崎瑞穂 氏 (株)オーザック 専務取締役/広島同友会理事・求人社員教育委員長
※内閣府「働き方改革実現会議」有識者議員”
(株)オーザックは金属加工を専門とする製造業を営んでいます。岡崎氏は社長の奥様で社長と共に子育てしながら働いてきた経験から20年前に1年間の育児休暇制度を社内の反対を説得して導入しました。働き方改革は主に専務の岡崎氏が進めています。男性社員も利用しだすと社内の雰囲気が変わりました。生産性を落とさずに残業時間を減らす工夫を社員の知恵で「多能工」という仕組みが取り入れられました。社員は複数の機械を扱うことで残業時間は平均1人あたり約1時間。残業に頼らない風土が確立し、退社後地域活動に携わる社員もいるといいます。
働き方改革は労働時間を削減することが目的ではなく、社員目線や柔軟な姿勢で取り組み、社員がいかに幸せに暮らせるかを実現することが目的だと感じました。
【第4分科会】地域づくり
テーマ「自社の元気が石川の元気!~地域内循環でふるさとに貢献~」
パネリスト
小坂 勇治氏 (株)中東 代表取締役社長
橋本 昌子会員 (株)スパーテル 代表取締役
宗守 重泰会員 (株)宗重商店 代表取締役
コーディネーター
高屋 利行会員 (株)高屋設計環境デザインルーム 代表取締役社長
第4分科会は「地域づくり」を大テーマにパネルディスカッションとグループ討論を行いました。パネリストの自社紹介のあとコーディネーターの高屋会員から、グローバル時代の中では個々の地域経済や地域社会をいかに維持し、地域の企業・金融機関・住民・自治体が共同で地域の個性を戦略化することが「地域づくり」であるとの定義があり、地域内再投資力の概念図を使い、我々中小企業がどう地域に役立っているのかを説明しました。パネル討論では、「地域を見据えた次への再投資とは?」に対し小坂氏は2年前に強度の弱い木材も強く使える特色があるCLTの製造ラインを増設した。全国でCLT製造工場は8社しかなく、色々な職種の仕事で地域の雇用が増えると語り、「環境への取り組みは?」に対しても、国土の70%が森林であり、木材を資源と捉え、里山保全の意味でも木材を使う方向を国も推進している。建設に際して炭素放出量は一番低く環境に優しい語りました。「人口減少の中での地域内再投資力、問題点と打開策?」に対して橋本会員は、金沢市の人口が10年後46万から42万に減り、特に若い20代~30代の女性が6万人から4万人に激減する。また今から8年後に都市集中型か地方分散型になるかの分岐点が来ると紹介。持続可能な地方分散型社会を目指すために、健康経営、女性管理職を育てる、地域を巻き込んだワークショップ、SDGsについて学ぶといったことを基本に経営すると語りました。宗守会員は人材採用が課題の中、継続的に新卒の人材を採用し、障害者・外国人雇用も実施している他、女性の働きやすい環境を整えている。自然と同友会内連携が増えており、その後地域内連携もすすめていきたい。地域の人が集まってくる明るい会社を目指しますと語りました。
最後に高屋会員から、地域内循環率について、金沢市115%、小松市96%、七尾市80%、珠洲市65%と県内でも格差があるという報告がありました。今回の経営者フォーラムで地域を考え、地域に合ったニーズと自社が持つ特色をどう経営に取り入れるか、人材を確保し地域に貢献する企業づくりをどう進めるかを学び合う場になりました。